前回は物事の枠(フレーム)をいったん外し別の視点から見直す、リフレーミングについてお話ししました。短所をリフレーミングして長所に変え、自己アピールにつなげましょうというものです。この手法を人間関係にも活用すると、今まではうまくいかなかった職場での人間関係によい変化をもたらせます。
以前私が企業内でのキャリア面談を担当した時、ある非正規雇用の女性が課長に対する不満をぶちまけた話をしてきました。その女性は正社員登用を長年希望しているのですが、今の部署の課長の下ではとてもそれは見込めないと言うのです。課長は自分のメリットばかり考えているタイプなので人のことに興味などあるわけがない。しかももともとそりが合わない自分のために動いてくれはしないだろうというのが彼女の考えです。
そこで、その女性のキャリアアップで発生する「利益」に焦点をあてながら、二人の関係性をリフレーミングしてみました。女性はそれを「自分の利益」と考え課長にとってそうではないと考えていました。しかし自分の部下が実績を挙げ、それが会社から認められて正社員登用につながれば「課長の利益」でもあるはずです。自分のメリットばかりを考えている人ならむしろ頑張ってくれるのではないか。行動する前にあきらめずにとにかくダメもとで訴えてみてはと伝えました。
どうせ無理と思っていた女性は課長にもメリットがあるなら動いてくれるかも、と直接話す時間を持ちました。すると課長は親身になって聞いてくれて、人事部にもすぐ掛け合ってくれたそうです。その後、女性は課長へのかたくなな態度と、利己的な人だと決めつけていたことをとても反省していました。自分には「課長の利益」に見えていたことも、課長の考えがわかればそれは「課の利益、ひいては会社の利益」だと理解したのだそうです。
こじれている人間関係を別の角度から見てアプローチを変えれば思わぬ修復が可能になるものです。相手の出方を勝手に想像して関わる前に諦めるより、リフレーミングをしてみてうまくやっていく方向を探ってみてはどうでしょうか。