職業訓練ではより自分にあった仕事を見つけるために、時間をかけて自己理解をします。たいていの場合、はじめに「自分の長所と短所を見極める」を書き出します。ほとんどの訓練生はあっという間に自分の短所をたくさん並べ立てるのですが、長所なんて思いつかないと戸惑います。そんなとき、私は講師として必ずリフレーミングを勧めています。リフレーミングとは物事の枠(フレーム)をいったん外し、別の視点から見直すことを指します。自分で「あれも短所、これも短所」と書き出したものを、それは本当に短所なのかと角度を変えて眺めてみるのです。
例えば、「仕事が遅い」という短所を挙げた人がいるとします。確かに作業がゆっくりとしている、要領の良いやり方が思いつかない、などの問題点もあるのかもしれません。しかし、その仕事の結果にミスがなかった場合、時間がかかっているとしてもその仕事は「丁寧」であると言えます。つまり、フレームを「作業時間」から「結果の精度」に変えると、同じ事でも短所から長所に変わります。また、「遅い」のが他の社員との比較だけで、納期に遅れるわけではないのならさほど問題にはなりません。にもかかわらず特に求職中には、自分の性質を「短所」に捉えてしまいがちです。就職活動での折角のアピールポイントとなり得るのに、とてももったいないです。
かつて、短所のリフレーミングから自分に合った仕事を見つけた職業訓練生がいました。ある40代の女性は、ものごとの些細な違いや変化に敏感すぎる性格にほとほと嫌気がさしていたそうです。面談でそれを聞いたとき、「そこまで細かいことに気づけるのなら、そこを活かせる仕事をしてみたら」とアドバイスしました。それをきっかけにその人は日商簿記検定2級に挑戦し合格、今では監査の仕事をしているそうです。人の性質はリフレーミングによって短所から長所に変わり、そこから適職にたどり着けたりもするのです。
まず、自分の書き出した短所をポジティブワードに書き直してみましょう。飽きっぽい、は「好奇心旺盛」。臆病、は「用心深い」「慎重」。頑固、は「意志が強い」。そこから、今まで気づかなかった自分に向いている職業が見つかるかもしれません。